TOHO見聞録1970/vol.48（フランクフルト～ハイデルベルク）

またまた強行軍

　今日もまたお定まりの３本立てである。
　フランクフルトとハイデルベルクは９５キロの道のりである。９時に出発しても午前中に着いてしまう。早く着きすぎるとホテルのチェックインが出来ないため、ハイデルベルク城を見物することにする。

　しかし、メンバーの中には何から何まで団体行動というやり方にアレルギーを示す者もいるので、不参加者はバスの中でで待たせることにして、リフトで城まで登る。
　そろそろ、一人の人間として、或いは社会人として限界を感じさせる者も出てきたようだ。

　丘の上にあるハイデルベルク城は、久しぶりの快晴といったこともあって、景色は満喫できたが、冷え込みもかなり厳しい。空気が澄み切っているためか、秋色に染まった美しいネッカーの流れが一望できて、噂のとおりドイツでも有数の眺めである。

　古い大学街であるハイデルベルクは１９世紀にはブレンターノやアルニムといったロマン派の詩人達が本拠としたところである。
　また、ミュージカル「学生王子」の舞台となったことでも有名である。この城は廃墟のようになっているが、３０年戦争で破壊されたままの姿で保存されているのだそうだ。

　街のメインストリートであるハウプト・シュトラーセは狭い通り一杯に市電が走り、大変賑やかだが、ここも３軒の宿に分宿となる。

　会場のシュタット・ハルレはネッカーの河畔にあり、小都市の公会堂といった風情だが、多くの名演奏家が来援している、由緒あるホールだそうである。

　中間食の買い出しにスーパー・マーケットへ行ってみると、日本のものと同じ種類のみかんを売っていて、その名も「Satsuma」書いてある。
　値段もやすく、味も日本のみかんと変わらないので、仕入れて配ったところメンバー達は大喜びであった。

　今夜のコンサートはヘンデル『コンチェルト・グロッソ』、モーツァルト『ディヴェルティメント』、ヴォルフ『イタリアン・セレナーデ』、（以上３曲、尾高忠明指揮）、チャイコフスキー『弦楽セレナーデ』、小山清茂『アイヌの歌』、（以上２曲、斉藤秀雄指揮）、であったが、今夜のチャイコフスキーはモスクワのチャイコフスキー・ホールの演奏に勝るとも劣らぬ名演であった。

　今夜は秋山氏と同期生である指揮者飯守泰次郎氏がマンハイムから駆けつけてくれた。
　夜はスタッフの塩野氏と同室となり、街の魚屋で仕入れた、腐りかかったようなニシンの燻製でドイツのブランデーを飲んで語りあった。

ハイデルベルク城から市街を望む

ハイデルベルク城からネッカ―河を望む

ナッカー河畔

ハイデルベルク・シュタット・ハルレ正面

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