TOHO見聞録1970/vol.15（ブダペスト）

日本食でエネルギーチャージ

　今日は、フィンランド航空に乗ってブダペストへ向かう。
　これが初めての西ヨーロッパ系飛行機になるが、やはり雰囲気が全然違う。金髪長身碧眼のパーサーとスチュワーデスが、明るくにこやかにサービスしてくれる。このまま西側に行けたら……と願わずにいられなかったが、飛行機は今度も共産圏の国に到着する。

　ブダペストは快晴で夏のような日差しだった。
　空港（註＊2011年にフランツ・リスト生誕200年を記念してリスト・フェレンツ空港という名に改名された）は広いが、野原のようなところにターミナルビルがポツンと建っていて、今までの空港に比べるとなんだか田舎くさい印象だ。
　この国は「東欧の農場」といわれるほど農業が盛んで、特に野菜や果物は広く東欧諸国に輸出されているそうだ。
　空港のロビーに出ると、桐朋の卒業生で当地に留学している中原さんが迎えにきてくれていた。大勢の仲間がやってきたのが嬉しいのか、彼女のほうが感激して涙ぐんでいた。

　さっそくバスに分乗して、宿舎へ向かう。
　このバスがまた大変な代物で、ショックアブソバーが壊れているのではないかと思われるほど、尻の方から突き上げてくるような揺れ方をする。
　市街地に入るまでは埃っぽい道を走るが、ブダペスト市外に入ると町並みも落ち着いた風情になってきた。

　ホテルはハンガリーの公務員宿舎のような施設らしく、簡素であるが明るく清潔な建物である。
　食事も比較的味がしっかりしていておいしい。
　ハンガリー料理に欠かせないパプリカの香りが本場ならではの新鮮さで食欲をそそられる。ここまで回ってきた国の味気ない料理とは一味違い、いかにも民族色の強い独特の味と香りがあった。

　夜は日本大使館の招待で和食のパーティーがあると聞いて一同大喜び。タクシーのピストン輸送で大使館へ向かった。
　駐ハンガリー大使館の上田大使は大変気さくな方で、我々も自覚していなかったような日本食不足を充分補ってくださった。天婦羅、海苔巻き、いなり寿司、蕎麦、味噌汁などどれもじつにうまく、やはり自分は日本人なんだなとあらためて実感させられた。

　これらの心づくしは大使館員の奥様たちの奉仕によって作られたそうだ。
　ブダペストにはまだ日本料理店もないので、保存の効く食材に限られていたが、我々を激励するために備蓄してある食材を使ってふるまってくれたのだと思うと感謝の気持ちでいっぱいだった。
　日本にいてはなかなか味わえない喜びである。

ホテルから見た早朝のプラハの街。

古い建物がたくさん残るプラハの町並み。

プラハ城と並んでよく観光ガイドで紹介されるティーン教会。

なぜか車だけは鮮やかな色だったプラハ…。

管理者の許諾を得ずに、当サイト内のあらゆる画像や文章などの情報を無断転載することは
著作権侵害にあたる行為のため禁止します。