TOHO見聞録1970/vol.18（ベオグラード）

移動と待ち時間だけの一日

　午前11時にミシュコルツを出発し、バスでブダペストの空港へと向かう。
　ハンガリーの田園は果てしなく広い。どこまで行っても変わらない景色の中をのろのろと走るバスは、のどかを通り越しておそろしく退屈だった。

　３時間かかって空港に到着。ここから今度はジャットエアウェイズに乗ってユーゴスラヴィアに向かう。
　遅い昼食を済ませ、フライトを待っていたところ、午後３時発の予定のフライトが午後６時になったという知らせが入る。
　このパターンにはもう今さら驚かないが、それにしても昨日のミシュコルツの件といい、ここのマネージャーはあまりにも無能すぎる。
　観光ならば多少の時間の遅れはしょうがないで済むが、興行で来ているのだからこういうことで気力体力を消耗させられるのは本当に勘弁してほしい。スタッフとしては身の細る思いだ。
　空港といってもブダペストの空港は小さくてなにもない。
　しかたがないので、交替で荷物番をしながら狭いロビーをうろうろして時間を潰す。

　ベオグラードの空港に到着した時は、もうすでにとっぷりと日が暮れている状態だった。
　日本大使館の荒木氏とユーゴコンサートのポポーヴィチ氏の出迎えを受け、空港からそのまま日本大使館へ向かう。
　今夜も大使館でパーティーをしてくださるらしい。
　ベオグラードの大使館はなかなか立派な建物で、ここでも天婦羅やおでんなどをふるまってくださった。
　「ブダペストでも日本食をふるまっていただいたんですよ」と大使に話したところ、「ハンガリーにはろくなものがなかったでしょう」と暗に「同じ社会主義国でもユーゴはハンガリーよりも豊かだから」と言いたいような口ぶりで言われた。
　たしかに食材もブダペストより豊富そうだったし、味もおいしかったのだが、２日前に食べたばかりとあってメンバーはあまり感激していなかった。
　せっかく用意してもらったのに大使にはなんとも申し訳ないことをしてしまった。

ミシュコルツからブダペストへ向かうバスより。こんな風景が延々と続く。

ベオグラード大使館での歓迎パーティー。中央の鍋はおでん。

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