TOHO見聞録1970/vol.46（シュトゥットガルト～フランクフルト）

強行軍とまずい飯

　今日もまた、移動と練習と本番の３本立、このところホテルも悪く４日以来風呂も入れない。

　朝シュトットガルトのホテルを出るとき、おかみさんの姿が見えないので、聞いてみると、過労で寝込んでいるという。開店以来初めてのような、大勢の客に、心のこもったサービスをしたため、ついに、倒れてしまったらしい。
　宿の主人に、またアウトバーンの入り口まで見送られて、フランクフルトまで２３０キロを走る。

　フランクフルトは日本航空の支店もあり、ドュッセルドルフ・ハンブルクと並んで日本人には馴染みのある街である。中央駅近くのビアホール風の店が我々の食事をする場所となったが、ここの食事がまた、ドイツ的なお粗末さで、戸田団長も「うちのねこめしを思い出した」と手をつけなかった。
　ドイツ人の味覚音痴は世界でも指折りで、我々もいささか閉口している。

　食事の最中に桐朋の一期生の、乃村（瀬川）和子さんが現れる。
　彼女はなかなかの顔役で、ドイツを訪れた日本人は皆世話になっているらしい。
　ここで病人が合流したが、相変わらず回復しておらず、結局ベルリンの田中路子女史の所へ先送りして面倒をみてもらうことにして、乃村さんに付き添いをお願いすることになる。

　それにしても、ドイツに入って4日目になるが、天気もさえず、食べ物も期待できず、何か陰鬱で気分も盛り上がり欠ける。
　時間があれば観光をする場所もあるのだろうが、ホテルと演奏会場を往復するかぎりは写真を撮る気にもならない。

　今日のコンサートの会場はドイツ銀行ホール、プログラムは、ヴィヴァルディ『四季』（斉藤秀雄指揮）、モーツァルト『ディヴェルティメント』、バルトーク『ディヴェルティメント』（小泉ひろし指揮）、であるが、ホールといっても会議場風であまり良いホールではない。
　聴衆も７割の入りで、西欧に入って初めて空席の目立つ演奏会であった。

　フランクフルトは現在ドイツの商業・金融の中心地で、あまり、芸術的な都市ではないようだ。
　しかも、演奏会の準備も不手際でポスターが刷り上がったのが、一週間前だったという。
　タウプマン氏も大変残念がって、ローカル・マネージャーに文句を付けていた。
　GP中に川崎氏と駅の周辺を歩いてみたが、何とも胡散臭い街である。

管理者の許諾を得ずに、当サイト内のあらゆる画像や文章などの情報を無断転載することは
著作権侵害にあたる行為のため禁止します。