TOHO見聞録1970/vol.45（ミュンへン〜シュトゥットガルト）

アウトバーン疾走

ミュンヘン～シュトットガルト間は２２０キロだが、ドイツが誇るアウトバーンはさすがに快適である。
　また、そこを走るドライバー達も実に整然と走り、日本のように、やたらと車線を変えて追い越しをするような車はいない。
　やはり、伝統があるだけに大人の走り方をするようだ。ただ、それだけに変化がなく、眠気も一入である。

　シュトゥットガルトは小高い丘に囲まれた、あまり特徴はないが、落ち着いた雰囲気の街である。丘を下って市内に入るあたりは、秋の気配が濃く、紅葉に包まれた街並みが美しい。

　ここのホテルは小さく、ペンションのような感じだが、主人がアウトバーンの出口まで迎えに来るなど、一家を挙げて歓迎してくれる。
　食事も食べ放題でサービスは満点だが、食堂が小さく、全員が一度に食事をすることが出来ないのは不便である。
　シュミット氏もすっかり頭を抱えていたが、リハーサルの順番をやり繰りして、食事を２部制にすることを考えて、斉藤教授に納得してもらい、シュミット氏の窮地を救ってやったため、大変感謝された。
　最近はシュミット氏も我々のやり方をすっかり飲み込んで、苦楽を共にするという姿勢を見せ始めた。

　コンサートもよく聴きに来て、レパートリーもすっかり覚えてしまったようだ。

とくに、小山清茂の『アイヌの歌』はお気に入りで、この曲が始まると楽屋でゴーゴーを踊って悦に入っている。

　今日の中間食はホテル提供のご飯でおにぎりを作ったが、この米たるや、我々が持参しているインスタントライスより数段質が悪く、食べるのに一苦労した。
　一体どんな調理をしているのか、場合によっては炊き方を指導してやろうと思い調理場に乗り込んでみると、何と、ビニール袋入りのアルファ米を大きな水槽にお湯をはった中へ放り込んである。ビニール袋の角をはさみで切って、自然にお湯が染み込んで、米がふやけるのを待っているだけだ。
　しかし、日本人が来るからと一生懸命米を用意してくれた、気持ちには感謝しなければならない。主人は得意顔で「米が食べられて良かっただろう、皆が喜ぶなら明朝も米にしようか？」といわれて断るのに苦労した。

　この町のホールは比較的新しく、設計も斬新で、どちらかというと日本のホールに似ている。設備もなかなか良く、ベートーヴェン・ザールとモーツアルト・ザールの大小二つのホールと立派なレストランを備えている。

　今夜の演奏会は、ヴィヴァルディ『四季』（斉藤秀雄指揮）、モーツァルト『ディヴェルティメント』、バルトーク『ディヴェルティメント』（以上２曲小泉ひろし指揮）を演奏したが、盛大な拍手で盛り上がった。

　この街も同窓生が続々と集まり、皆でコンサートの成功を深夜まで祝った。

シュトゥットガルト・ベートヴェン・ザールGP

管理者の許諾を得ずに、当サイト内のあらゆる画像や文章などの情報を無断転載することは
著作権侵害にあたる行為のため禁止します。