TOHO見聞録1970/vol.36（サルツブルク）

ガス抜き休日

　朝食後、斉藤教授とスタッフ一同による会議があり、今後の予定やグループ運営の方法などを話し合う。一昨夜申し入れがあった、メンバー達の意見も出来るだけ取り入れてやらねばならず、斉藤教授の演奏に対する信念もますます強くなるばかりで、なかなかわだかまりを一気に解消と言うわけにはいかない。その後、メンバー達も交えて話し合いをもち、多少お互いに理解を持つように運んだ。話し合いが長引くと自由時間が短くなるということもあり、一方でトウサイの健康問題もあるので、適当なところで、保険担当の天春先生にドクターストップを入れてもらった。話し合いが終わるともうメンバー達は籠の鳥が放たれたように外出して、ホテルががらんとしている。ぶらぶらと街を当てもなく歩いていくと、２時間足らずで街中が歩けてしまうような可愛い街だが、彫金細工やハンドメイドの飾り皿など、眺めているだけでも楽しい。店の看板も手の込んだ彫金で出来ていたりして、オーストリアらしい細やかなセンスを感じる。ホーエン・ザルツブルク城の下のレストランで入って昼食をとる。実に１ヶ月以上も３度３度の食事を団体で食べていたので、忘れていたが、自分一人で料理を選んで注文し、静かに食事が出来ることが、こんなに気の休まることとは気が付かなかった。

　食事の後、ホーエン・ザルツブルク城の上まで登って見ると、扇状の丘の要に築かれているこの城からは、ザルツブルクの美しい街が一望出来る。街の中心を流れるザルツアッハ川の両岸には昔の古い建物がならび、あちらこちらの教会から夕べの鐘の音が流れてくる。この静けさの中で、はるばるヨーロッパに来たという実感が迫って来る。城からケーブルカーで降りて、モーツァルト生家のあるゲトライデ通りを行く。特に新しい発見はないにしても、モーツァルトの自筆譜や愛用した楽器などを薄暗く、床のぎしぎしいう部屋でじっと見ていると、やはり音楽の故郷を訪れているという、何か特別な喜びが沸いてくる。この自由時間がメンバー達にとって非常に必要なものであることが良く判るだけに、今後のスケジュールの中で自由な時間を出来るだけ捻り出さねばならない。この街がとても気に入ったので、明朝、早起きしてホーエンザルツブルク城の日の出を見に行こうと思う。

ホーエン・ザルツブルク城からザルツアッハ川を望む

カプチーナ・キルヒェ

土曜日・ホーエン・ザルツブルク城の中庭

ゲトライデ通り・モーツアルトの生家

モーツアルトの部屋

夕暮れのゲトライデ通り

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