TOHO見聞録1970/vol.61（パリ）

今日もパリ、明日もパリ

　今日は午後５時まで自由行動、メンバーもすっかり旅慣れて、放っておいてもどんどん出かけて行くので、全く手間がかからない。

　川崎氏と二人でシャンゼリセまで、地下鉄でいこうということになり、アール駅へ行ったところ、メンバーが何人かうろうろしていて、シャンゼリゼという駅がないと、地下鉄の路線図を見て騒いでいる。なるほど、フランス語は発音しない文字が沢山あったり、リエゾンがあったりして、読みにくい。Ｃｈａｍｐｓ－Ｅｌｙｓｅｅｓ をシャンゼリゼと読むのは、初めてでは難しいかも知れないが、これも彼らにとってはよい体験だと思う。モスクワでは地下鉄の駅名など読むのは大変だが、花のパリで Ｃｈａｍｐｓ－Ｅｌｙｓｅｅｓ が読めないのは一寸恥ずかしいと思うことも大切なことである。

　凱旋門まで行って上まで登って見る。田舎者と言われても、登らぬ馬鹿、２度登る馬鹿で仕方がない。ナポレオンが考えただけあって、上から眺めると、すべての道が自分の所へ集まって来るようで、誰しもパリを征服したような気分になる。
　その後コンコルド広場、マドレーヌ寺院、楽譜屋のデュランなどを回り、戸田団長ご推薦の魚料理屋へ行く。オニオンスープ、貝柱のコキールなどさすがに美味である。

　店を出てオペラ通りをぶらぶら街並みを楽しんでいるうちに、旧市場（アール）のところへ出る。

　本番の曲目は、ヘンデル『コンチェルト・グロッソ』、モーツァルト『ディヴェルティメント』（以上2曲、斉藤秀雄指揮）、バルトーク『ディヴェルティメント』、小山清茂『アイヌの歌』（以上2曲、尾高忠明指揮）今夜は予想通り昨日寄りは数段入りが良い。このような街では良い演奏をすれば、口コミで日ましに聴衆は増えて来るはずだ。
　パリ・ソワール紙に我々の演奏を絶賛した批評がのっている。ところが、舞台係のおじさんが一面を指さして「アラキリ！アラキリ！」とわめいているので、良く見ると三島由紀夫が割腹自殺をしたという事件が『ＨＡＲＡＫＩＲＩ』という大きな見出しの記事になっている。事情はよく解らないが、日本では何が起こっているのだろう？

　今夜から斉藤教授夫妻が他のホテルに移ったため、一部屋余裕が出来て、私がその部屋に移ることになった。やはり大分疲れているようで、一人になるとほっとする。夜、一人で居ると、この上なく楽しく、寝るのが惜しいぐらいだ。

ヴァンドーム広場

パリ・オペラ座 （ガルニエ）

マドレーヌ寺院

カルーゼルの凱旋門　

ャンゼリゼ通りから凱旋門を望む

パリの整然とした街並み

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