TOHO見聞録1970/vol.60（パリ）

もう移動はなし

　パリでの公演は一風変わった企画で、オペレッタ風の軽演劇と抱き合わせになっていて、毎晩６時半から１時間のプログラムを演奏すればよい。

　今日は午前中に練習をすることになっているので、３０分早くバスで出発し、市内を軽く一巡し、自由時間の行動が無駄なく出来るように土地勘をつける。
　会場のテアトル・デラ・ヴィラは旧サラ・ベルナール劇場（名女優サラベルナールが活躍した劇場）で現在は市立劇場として使われている。内部は一見映画館風で、およそコンサート・ホールとは縁遠い。

　夕方まで自由行動をさせて良い日が２日あるので、その日の昼食をフリーにして、昼食代を支払うことになったので、練習中に戸田団長と大使館、東京銀行へ１ドル札に両替してもいらいに歩く。戸田団長は元外交官であり、パリにも長い間住んでおられた関係から、大変顔がきく。

　午後はそろそろはい出して、ホテルの周辺をブラブラしてみる。パリの人々は外国人を全く無視しているかのように関心を示さないので、こちらにとっても気が楽である。
　今年の流行は鉄錆色のマキシコートらしいが、さすが、女性がそれぞれ個性的な装いをしていて楽しい。

　今夜のコンサートは手ごたえを見るため、斉藤・秋山の布陣である。
　曲目はヘンデル『コンチェルト・グロッソ』、モーツァルト『ディヴェルティメント』（以上2曲、斉藤秀雄指揮）、ストラヴィンスキー『ミューズを司るアポロ』、小山清茂『アイヌの歌』（以上2曲、秋山和慶指揮）。コンサートは時間が早いため、あまり人が集まらなかったが、反応には確かな手ごたえがあった。
　明日はもっと聴衆が増えるだろう。

ここまで来ても練習は手を抜かない斉藤教授

同左

最後の練習で秋山氏も熱が入る

同左

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